Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.8 ) |
- 【日時】 2008/09/26 02:12
- 【名前】 うにうに
- さて,漢字廃止で何が起きたのでしょうか。
解説文にあった「各種の評論・研究論文や新聞・雑誌の記事に、総じて書き言葉の世界に、語彙の恐ろしいまでの貧困化がもたらされたのである。」という記述は,本書のまえがきに書かれている文そのままです。 本文を読むと,もう少し具体的に書いてあります。 つまり,同音異義語の区別が付かなくなったり,漢字語の意味が(初めて聞いた語の場合)想像できなくなる,そのため漢字語の使用頻度が減る,しかし抽象概念や専門用語は主に漢字語で表されてきたもので,その結果,抽象度の高い高度な議論ができなくなり,国民全体の思考レベルが低下した,ということのようです。 しかし,まえがきにあるような「新聞・雑誌記事の語彙が恐ろしいまでに貧困化した」かどうかは,よく分かりませんでした。 せめて,1960年代と2000年代とで,新聞・雑誌記事がどう変わったかという実例でも載せてあれば良かったのですが,そういう具体的な説明がないので(漢字の熟語を読めない大学生が増えている,といった調査結果は載っていましたが),「書き言葉の貧困化」と言われても説得力が乏しいものになっています。 そして,載せるなら日本語訳だけでなく,原文も載せてあればなお説得力は増したことでしょう。 これは次の記事で改めて述べますね。
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.9 ) |
- 【日時】 2008/09/26 02:11
- 【名前】 うにうに
- この本を読んで,どうも分かりにくいなと感じられる箇所がいくつかありました。
その理由は,ハングルを1文字も使っていない点にあります。 後半のことわざ集では,カタカナ表記である程度出てくるのですが,前半はほとんど日本語訳になってしまっています。 つまり,韓国語における漢字やハングルや漢字語や固有語の使われ方に関する議論を,日本語で考えるようになっているのです。 著者や出版社側は「ハングルで書いたって読めない読者が多いからしょうがないだろう」と言うかもしれませんが,それならば振り仮名を付ければいいだけの話です。 また,「原文がハングルであっても漢字語は便宜上漢字表記した」とでもしておけば,もっと親切でしょう。
例えば,韓国の憲法の第1条と第2条が次のように書かれています。(p.33) 第1章 第1条 1大韓民国は民主共和国である。 2大韓民国の主権は国民にあり,すべての権力は国民から出る。 第2条 大韓民国の国民の要件は法律で規定する。
それに続いて,「90%以上が漢字語で,しかも概念語のすべてが漢字語である」と説明されています。 しかし,ここに書かれているのは日本語です。日本語に訳された憲法をみて,韓国語では概念を表すときに漢字語を使うのかどうか考えろっていわれても無理な話です。
もしそんなことができるのなら,アメリカ合衆国の憲法の冒頭を持ってきたっていいわけで,
第1条 第1節 この憲法によって付与されるすべての立法権は、合衆国連邦議会に帰属する。連邦議会は上院と下院で構成される。 第2節 (一)下院は、各州の人民が二年ごとに選出する議員で組織される。各州の選挙人は、州議会で議員数の多い一院の選挙人に必要な資格を備えていなければならない。(以下略)
これを見ながら 「英語の憲法は90%以上が漢字語で,しかも概念語のすべてが漢字語である」 とやっているようなものです。
本書の後半は,管理人さんがおっしゃっているとおり,韓国語の慣用句やことわざを紹介していますが,これもすべて日本語訳を通してです。
まえがきによると,漢字廃止以前の韓国語ではもっと表現が豊かだったことを示すために載せた,と言っていますが,半分こじつけじゃないのかなあ。 残りの半分は,前半だけだと単行本として出すにはページ数が少なくて寂しいからなのでは,とつい邪推したくなります。 もし本当に,本来の韓国語の表現の豊かさを伝えたいのなら,日本語訳(直訳)だけでなく,ハングルも載せてほしい。 茨木のり子さんの「ハングルへの旅」(朝日新聞社)にはたくさんハングルが(振り仮名付きで)使われていますが,韓国語を知らない読者が読んでも,かえってすんなりと読めて分かりやすい気がします。
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.10 ) |
- 【日時】 2008/09/26 02:33
- 【名前】 うにうに
- 長くなりました。これで最後にします。
ちょっと面白かったのは,漢字教育を昔に戻すだけでは足りない,日本のように訓読みを導入すべきだ,という著者の主張です。 そうすることで,本当に漢字を知り,使いこなす力がつく,ということのようです。 あまり具体的に書かれていないので(例によって),分かりにくいのですが,たぶんこういうことでしょう。
今の韓国では,漢字の訓読みはあくまでも文字を説明するときに使われるものであって,書かれている漢字を固有語で読むことはありませんよね。 たとえば,「辛」なら매운 신ですが,辛という漢字が出てきたら必ず신とのみ読みますよね。 それを,辛운 라면と書いて,매운 라면と読む,みたいなことでしょうか。(운の部分が送りがな,いや送りハングルというのかな) あるいは,1919年3月1日の独立宣言書の冒頭を例にとると,「吾等은玆에」と書いてあるのは普通「오등은 자에」と読みますが,これを「우리들은 여기에」と読ませるとか。
面白いことは面白いですし,確かに韓国人の漢字応用力もぐんとアップしそうですが,我々外国人からすると,漢字の訓読みまで覚えるのはちょっと大変そうです。 (だから,日本語を学ぶ人って本当に偉いと思います)
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.11 ) |
- 【日時】 2008/09/27 05:10
- 【名前】 kajiritate webmaster
- うにうにさん,詳しい書き込みありがとうございます!
本買っちゃいましたか…この本のこと書かなきゃよかったですね…すみません! うにうにさんの書き込みを理解するのと返事を書くのに時間がかかってしまいました…
結局著者は「熟語を読めない大学生が増えている」という調査結果だけを根拠に 「貧困化」が起きたと言っているということでしょうか…? 人数が増えているかはわかりませんが,日本にも漢字が苦手な方はいますので, 程度の差こそあれ日本にも当てはまりますよね…(^^;
日本の場合でも,例えば昔の本を見ると仮名遣いだけでなく 漢字の使い方もかなり違って難しく,これが同じ日本語だろうかと思えるほどですので, 日本でも100年前とかと比べると,著者のいう「貧困化」が起きているのかも?
漢字を知っていれば漢字語の抽象概念や専門用語の初出時の理解の助けになるという点は 納得できるのですが,専門性の維持や議論の際に必要ならばその言葉の意味を イヤでも理解しなければなりませんから,差が出るのは初めだけのような気もします.
また,漢字語の単語に使われている各々の漢字を知っていても,結局はその単語が意味する 抽象概念や専門用語自体を理解する能力が無ければ,漢字の羅列以上の何物でもないと思います. 逆に,その漢字語自体を理解する能力さえあれば,それを構成する個々の漢字を知らなくても さらにはそれが漢字語かどうかさえ知らなくても単語の正確な意味を把握することは可能で, この点は,複数の固有語からなる合成語の意味を正確に理解するために その由来となった個々の単語の意味を知る必要は無いのと同じことだと思います.
そもそも国語をどうするかについてはその国民が決めることで, 漢字をもっと使ったほうがいいという国民が多ければそうすればいいし, 今のままで問題ないという国民が多ければ現状維持で行けばいいし, 2つの意見が国内で対立していれば議論を尽くして方針を決めればいいことで, いずれにせよ他国民が口を挟む問題ではないと思っています.
ましてやその賛否にまで言及するのは完全にお門違いだと思いますので, よほどとんでもないことが起こらない限り,私は黙って動向を見守りたいと思います.
漢字との混ぜ書きにしてもらえると意味が分かりやすくていいのにな… と思うことはありますが,漢字音を知らないと声を出して読むときに困りますね…(^^; 訓読みの導入は試みとしては面白そうですが,覚えるべきことが増えるので 外国人の韓国語学習者のひとりとしては,やって欲しくないです…(^^; もしそうなったら,千字文を教えてくれる書堂を探そうと思います…(^^;;;
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.12 ) |
- 【日時】 2008/09/27 08:54
- 【名前】 けぃ。
- 【URL】 http://kei3288.exblog.jp/i0
- kajiritate webmasterさん、おはようございます。
なかなかコメントが入らなかったので、気になって何度も覗きに来ました。 で、私もこの本を注文しました。(●^_^●)ヾ
今、漢検を勉強しているのでとても気になります。 (皆さまのコメントを読むと興味がわきました。) 私も読んだら感想文を書きたいと思います。
りっぱな感想文は書けないと思いますが、3行でもいから書きたいと思います。 また、来ます。ε=ε=ε=(*^-)o
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.13 ) |
- 【日時】 2008/09/27 13:55
- 【名前】 ハラボジ
- 昔読んだ「日本の驕慢・韓国の傲慢」(1993年徳間書店)に確か似たような
箇所があったと思い、引っ張り出して見てみました。 この本は、呉善花氏と渡辺昇一氏との対談を纏めたものなのですが、 こんなくだりがあります(呉善花氏の発言です)
(略)戦後の韓国でハングルを国字として学んだ者たちには、私もそうなん ですが、自分の国の文学が読めなくなっています。そのことがわかって いながらも、あえて漢字を排してハングルを採用したのです。 (中略) また、漢字の廃止は文章表現の変革をもたらしました。漢字では含蓄を含ん だ言い回しも可能ですが、ハングルではその効果を出すことができません。 そこで文章も簡略で直接的な表現へと変わっていったように思います。 (後略)
そのあと、自分は小学校4・5年生では漢字ハングル混じり文を学び、 さまざまなレトリックを用いた自分の作文は、先生に誉められて鼻を高く した話。 6年生からは、ハングルによる直接的な表現で文章を書かないと、 先生から「直せ」といわれたという話、などが続きます。 そして、だから「確かに、私が書く文章は日本語ですと品がないのです」と 述べています。・・・・・・・あれ?!とも思いますが。
渡辺吉鎔氏の「韓国言語風景」(1996岩波新書)にも、ハングルと漢字に関する 記述があります。すこし長くなり恐縮ですが、紹介します。
過去に、漢文を読み下すための「口訣(구결)」、固有語を漢字を用いて書き 表そうとした試み「吏読(이두)」や「郷札(향찰)」があったことなどを紹介し、 ハングルの成立について解説したあと、「ハングルと漢字の先行き」という項で 次のように述べています。
ちなみに、このような壮大な思想と科学的合理性をあわせもったハングル文字 ではあったが、19世紀末までは公文書は漢字でのみ作成された。 だが、一方では数多くの儒学書、仏教書のハングル訳が人々のこころのささえ となったし、農学書、医学書もハングルのおかげで広く読まれるようになった。 そしてなによりも、定形詩、長編の韻文詩、ハングル小説、ハングル日記など、 15世紀以来豊かな物語の世界が展開されたのは、ハングルあってのことで あった。 (中略) 若い人があまり漢字が読めない。そこで、この現状を憂慮する声もこのごろは 聞こえはじめている。とくに、大切な文化遺産としての古典の世界との断絶、 中国や日本など漢字文化圏との経済関係など、漢字教育の見直しも議論され はじめている。 (後略)
渡辺吉鎔氏も日本国籍を取得されて、外から祖国韓国を見るという点では 呉善花氏と同じ立場です。もっとも、学者と執筆家との違いはありますが。 渡辺吉鎔氏も漢字教育の必要性を否定はしておらず、ここも、呉善花氏と同じ なのですが、吉鎔氏の話は素直に受取れて、呉善花氏の話には反発したくなる のは何故でしょうか。 「吉鎔氏は漢字教育を受けた世代だから日本文にも品があるのだ」と、呉善花 氏は解説するかもわかりません。
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.14 ) |
- 【日時】 2008/09/28 03:20
- 【名前】 kajiritate webmaster
- けぃさん,ハラボジさん,書き込みありがとうございます!
けぃさん,この本買っちゃったんですね…早く注文取り消してください!! (^^;;; 返事を考えるのに時間がかかって,なかなか書き込めませんでした….
日本人にとって漢字は切っても切れないものですよね! 私が韓国の地名を調べたのも「漢字でどう書くのか?」が気になって しかたがなかったのがひとつの理由なんですが….
ひょっとしてこれは中国の陰謀でしょうか? (^^; もし著作権が昔に遡って適用されたら,日本は中国に 漢字の使用料をいくら払えばいいのやら…(^^; ひらがなやカタカナの元は漢字なので,その分も請求されるかも?
そのような事態に備えて,日本もハングルのような独自の文字を発明して 早く漢字依存症から脱しなければならないようです!!(^^;;;
ハラボジさん,再び詳しい書き込みありがとうございます!
この方の本には論理的に問題がある記述が散見されるようですね. ハラボジさんのご指摘の部分,一体どっちなんだ!って言いたくなりますよね…(^^; 著者は漢字を使おうが使うまいが,日本語にしろ韓国語にしろ, 結局自分は品のない文章しか書けないとご謙遜なさっているのでしょうか? (^^;;;
そもそも漢字と漢字語の区別があいまいで,それが一番のネックになっているような…? つまり,漢字語自体を無くして代わりに固有語で表現していることと, 漢字語が混ざった文章の漢字語の部分もハングル表記していることとを 著者はごっちゃにしていらっしゃるように思えます.
筆者のいう「ハングルによる直接的な表現」が前者の意味で使われている場合, 例えば日本語でも文章に漢字語を一切使わずにすべて和語で表現すると 「含蓄を含んだ言い回し」の効果は出ないことになりますが,果たしてそうなのか…?
著者が6年生のときに先生に言われて書き直した作文の一部は, これまで使い慣れていた表現が使えなくなって本人としてはしっくりしなかっただけで, 客観的に見て修正前後で作文の出来には大差なかったのでは?とも思います. 文章力があれば同じことを数種類の表現を用いて書くことができますし, 沢山の著作がおありですので,もともと文才はお持ちだったと思いますし….
漢字を知らないので古典の世界などで文化の断絶が起きているという見方は, 私としては懐疑的です.なぜそう感じるのかは漠然としていてうまく説明できないのですが, ごく大雑把に言うとこんな感じです.
漢字を知っている日本人でも古典に興味がない方はそれに触れることはないでしょうし, どこの国の方であろうと自国の古典に興味がある方は, 書き言葉が現代と大きく異なっていても理解しようと頑張ると思います. つまり,漢字が分かるかより,興味があるかのほうが問題ではないかと….
そう考えると,日本でも文化の断絶が起きていると言えそうですが, この点,専門家の方々が研究をお続けになるとともに,現代語訳などを発表するなどして 興味を持った一般の人々が気軽にアプローチできる道を開いておけばいいことだと思います.
韓国では漢字を知らない人が増えて70年代の新聞でも読むのが大変… という話なら納得できますが,古典のような昔の文章を読むには 古文に関する知識や書かれた背景など,漢字以外にも知っておくべきことが沢山あって 漢字が分かるぐらいでは太刀打ちできないと思います. たとえ全文ハングルでも現代文とはぜんぜん違うでしょうから,読むのは大変でしょうね….
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.15 ) |
- 【日時】 2008/09/28 04:28
- 【名前】 hangul100
- >>ハラボジさんへ
呉善花氏の話には反発したくなるのは何故でしょうか。
日本語のように複数の文字を使い分ける言語は極めて特殊で 大多数の言語では、主に使う文字は1種類だけでしょう。それを日本語が 普通にみたいに話していると、やはり違うのではないかと思いますね。 それに日本語は(中国出身の人など漢字圏の人は別にして)、 漢字を覚える必要が無い会話は、それほど難しくないのに、 日本語の漢字には複数の読み方があるため読解や作文は 非常に難解だという話も聞きます。 呉善花氏の主張は、せっかく日本語も韓国語も知っているのに、 両者を上手く相対化できてないとでも言えば良いのでしょうか。
>>kajiritate webmasterさんへ たとえ全文ハングルでも現代文とはぜんぜん違うでしょうから,読むのは大変でしょうね….
ハングルが発表された書物である訓民正音のハングル版 (ハングルで書かれた古文)と漢文版(ハングルを発表した本は 漢文で書かれていたわけですね)を見比べてみたことがあります。 ハングル版は相当難解ですが、漢文版は、漢文をやったことのある 日本人なら、ある程度意味が分かると思います。 ただ、それ以上に問題になるのはハングルが作られる前の文章は基本的に漢字で 書かれていたという点です。ハングルだけしか知らないと、 ハングル成立以前の文献は現代語訳のある文献以外全く理解できなくなります。 韓国語のwikipediaの「ハングル専用と国漢文混用 한글전용과 국한문혼용」という項目でも、ハングル専用論者の意見として「歴史を学ぶ人は漢字を知らなければいけないが、一般人は漢字を知る必要は無い」と出ています。
「ハングル専用と国漢文混用 한글전용과 국한문혼용」 http://ko.wikipedia.org/wiki/%ED%95%9C%EA%B8%80%EC%A0%84%EC%9A%A9%EA%B3%BC_%EA%B5%AD%ED%95%9C%EB%AC%B8%ED%98%BC%EC%9A%A9
無理矢理にまとめるとすると、ハングルを本格的に使い出した以上、 ハングル中心と言う流れは必然だし止まらないと思います。 その上で、韓国の歴史や伝統、あるいは日本や中国との文化交流と言った 事柄を、どうやって大事にしていくかが問われているのだと思います。
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.16 ) |
- 【日時】 2008/09/29 04:41
- 【名前】 kajiritate webmaster
- hangul100さん,書き込みありがとうございます!
古典の理解に漢字の知識が欠かせない点についてはすでに触れたとおり 私もhangul100さんと同意見ですが, 「漢字を知らないので古典の世界などで文化の断絶が起きている」という見方に対して もう一度だけ申し上げたいと思います.
漢字の知識がある日本人でも万葉集を原文のまま理解することは難しいように 漢字の知識がある韓国人でも,それだけでは郷歌を理解するのは難しいと思います.
古典の理解には漢字以外にも必要とされる知識はたくさんあるので, “漢字を知らない”という点だけを理由に“文化が断絶する” とまで言ってしまうのには疑問がある,と私は思います.
韓国でハングル中心の流れが止まらないだろうという点も,仰るとおりだと思います. 日本語で漢字を廃止して,全部かな書きにした場合の非効率性は考えただけでも恐ろしいですが, ハングルではそれが当てはまらず,とても効率的でよくできた文字だと思います.
日本にも世宗大王のような文字の天才が現れて, 日本語を効率的に表記できてしかも分かりやすい画期的な文字体系ができればとも思いますが, たとえいいものができたとしても,現在の表記法に慣れた人たちからは奇異に思えたりして, 普及するにはまた別の困難があるでしょうね… 数百年後,日本でどんな文字が使われているのか気になります.
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.17 ) |
- 【日時】 2008/09/29 10:46
- 【名前】 ハラボジ
- 「漢字を知らないので古典の世界などで文化の断絶が起きている」という
見方に対してのkajiritate webmasterのご意見、ごもっともと思います
ただ、渡辺吉鎔氏のここの表現は「“漢字を知らないので、古典には見向きも しない”という状況になっている」という意味ではないでしょうか。 それを“文化の断絶”という激しい言葉で表現したのは、いかにも韓国人 らしいのですが。 つまり、漢字を知っていれば古典にも近づこうとするであろうし、そうなれば、 古典を理解するための知識を学習しようとする機会も増えるのではないか、 ということが言いたかったのだと思います。 私は、ここの表現、あまり違和感なく受取りました。 ただし、私は呉善花氏のようなハングル教育批判論者ではありません。
日本でもカタカナ表記を推進する「カナモジ運動」というのが戦前から ありました。伊藤忠兵衛(2代目)氏らが熱心に推進したようです。 戦後になっても、カナモジ表記に関しては「国語審議会」の大きなテーマ であったと聞いています。 1960年代に伊藤忠商事は社内文書をすべてカタカナにした、というのも 有名な話です。PCはもちろんワープロもなかった時代で、カナタイプ、 カナテレックスの使用にはカタカナが便利だったという理由もあるので しょうが。 現在でも「カナモジカイ」は財団法人として存続しているようですが、 どんな活動をされているのでしょうか。
話が逸れてしまい、申し訳ありません。
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.18 ) |
- 【日時】 2008/09/29 23:03
- 【名前】 kajiritate webmaster
- ハラボジさん,書き込みありがとうございます.
私は“文化の断絶”という言葉から渡辺氏の意図以上の衝撃を受けてしまったのかも…(^^; 日本で出す本には,ハラボジさんがお書きのようなソフトな表現を使って頂きたかったです.
漢字を使わないようにしようという動きは日本でもこれまで度々あったようですね. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%A2%E5%AD%97%E5%BB%83%E6%AD%A2%E8%AB%96
戦後に「当用漢字」を定めて使用する漢字の数やを制限したり略字を採用したりしたのも 将来の漢字の全廃を考えての経過措置だったのかも…? http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BD%93%E7%94%A8%E6%BC%A2%E5%AD%97
カナモジカイ,確かに現役のようですね! 伊藤忠商事で実際にやっていたとは知りませんでした…. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%A2%E3%82%B8%E3%82%AB%E3%82%A4 http://www1.ocn.ne.jp/~kanamozi/
ローマ字のほうも頑張っていらっしゃるようです. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E5%AD%97%E8%AB%96 http://www.roomazi.org/ http://www.age.ne.jp/x/nrs/
カナ,ローマ字とも,見ていて日本語とは思えないほど奇異に見えるのですが ハングルもそうだったように,ずっと見てるとそのうち慣れるのかも…? 漢字の有無に関わらず,日本語の表記は非効率にならざるを得ないような気がしてきます (^^;
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.19 ) |
- 【日時】 2008/09/30 22:27
- 【名前】 hangul100
- 漢字廃止に関する文章をどこかで読んで記憶があって、
町田健氏の「言語学が好きなる本(研究社出版)」に 「漢字なんていらない?(108ページ)」という項目があったのを 思い出しました。この本では同音異義語の問題を、漢字を使うから 同音異義語が増えるわけで、「自分で自分の首をしめているようなもの」 と書かれています。さらに興味深いのは、日本語で漢字を廃止する場合には 単純に分かち書きするだけではなくて、名詞や動詞語幹と助詞や語尾をカタカナと ひらがなのように区別して表記するなど色々と読みやすくするために工夫する 必要があると書かれています。 (ハングルも表記法というか正書法が、かなり洗練されてきて 漢字廃止が可能になったという側面もあると思います。) 町田氏の冷静な考察を読むと、 呉善花氏の主張は、客観的な事実というよりは、 日常使用する文字が変わってしまう衝撃を表現したものと理解したほうが良いのかもし れません。
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.20 ) |
- 【日時】 2008/10/01 06:46
- 【名前】 kajiritate webmaster
- hangul100さん,情報ありがとうございます!
同音異義語に関しては,漢字を使わなくなった韓国で混乱が起きている, といったことを日本語で書かれているのをみたことはありますが, とうの韓国では特に問題は起きてないような…(^^; 個人的には,日本でも同音異義語が紛らわしくて困ったことは 少ししかありませんし,文脈で判断したり,説明を加えることで 十分回避できますので,それほど大きな問題ではないと思います.
hangul100さんが引用されている部分だけ見ると,こちらの著者も 漢字と漢字語の区別があいまいのような…? 同音異義語は漢字語の問題で,漢字を廃しても漢字語は使い続けるのなら 同音異義語はそのままで,そうなると話し言葉だけでなく 書き言葉でも同音異義語は単語単独では区別できなくなります.
この点を韓国の現状に当てはめて,韓国では混乱している,と おっしゃる人もいるのだと思いますが,繰り返しになりますが 十分回避可能ですし,日本でも話し言葉ではそうしていますので, 情報伝達や意思疎通には大きな支障はないと思います.
ただ,漢字がいらないか?と言われると,漢字の便利さを 感じている一人としては,なくして欲しくないです. 漢字の一番の利点は,字体を見てすぐに意味を連想できる点だと思います. もっとも,漢字は文字数が多すぎて覚えるのが大変ですので, カナやハングルのような表音文字と比べて,どっちが良いとか悪いとか 一概には言えないのですが….
日本語はひらがな,カタカナ,漢字というおびただしい文字数でも 不自由に思っている日本人は特に見かけませんし, 韓国語は次第に漢字を使わなくなり,今ではほとんど見かけませんが, それでも日常生活では不便はありませんので, 平和なところにわざわざ波風を立てないほうがいいような…?
呉善花氏の著作は論理的な裏づけよりも情熱的な部分が大きいようで, その情熱的な部分に共感できれば大きな感銘を受けられるのでしょうが, 私はどうもそのようなタイプの人間ではなさそうです.
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.21 ) |
- 【日時】 2008/10/07 12:01
- 【名前】 けぃ。
- 【URL】 http://kei3288.exblog.jp/i0
- kajiritate webmasterさん、こんにちは。
「漢字廃止で韓国に何が起きたか」 著者:呉 善花(お そんふぁ)の 本が届きました。
韓国の政治は、よく分かりません。
読んで何が重要なのか探って見ます。 別に漢字がなくてもハングル文字でことは足りています。 朝鮮文字の「ハングル」は世界遺産に指定されています。
私は文章が下手で皆さまの会話に入れるような人間ではないけれど、 なんとか、頑張って読んでみます。
(*_ _*) \_/
また、来ます~^^v
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.22 ) |
- 【日時】 2008/10/07 20:02
- 【名前】 kajiritate webmaster
- けぃさん,書き込みありがとうございます!
そうですか… 本届いちゃいましたか…(^^; 購入なさった以上,有効活用されてください!
ハングルが世界遺産に指定されている,というのはちょっと違って, ハングルについて解説した本で,1940年に発見された 「訓民正音解例本」が,ユネスコの「世界の記憶」という プログラムに登録されている,ということのようです. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E8%A8%98%E6%86%B6
ユネスコの「訓民正音解例本」のページは次のURLです. 私は英語わかりませんので,後はけぃさんにお任せします m(__)m http://portal.unesco.org/ci/en/ev.php-URL_ID=22944&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.23 ) |
- 【日時】 2008/10/07 22:37
- 【名前】 けぃ。
- 【URL】 http://kei3288.exblog.jp/i0
- こんばんは。
「ハングルはUNESCOに登録されている偉い文字」と、 たくさんの人が思っていると思います。
>「訓民正音解例本」が,ユネスコの「世界の記憶」という プログラムに登録されている,ということのようです.
わぁ~、すごく勉強になりました。 ユネスコの世界記憶遺産(Memory of the World Register)を読んで 色々勉強になりました。 だけど「この記憶はもろい」らしいですね。
いつもたくさん教えてくれてありがとうございます。 私の場合は恥をかいて成長していっています。(●^-^●)/
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.24 ) |
- 【日時】 2011/06/04 21:00
- 【名前】 千住観音
- 小学館の朝鮮語辞典に「年上の方は国漢混交文の方が読みやすい」みたいな例文が確かあったはずです。戦前と戦後とで韓国語・朝鮮語の表記の仕方に、学問的にはともかく常識的には違ひがあるといふのは、辞書にかういふ例文が出てゐることからも容易に推察できます。
年上の方々には「国漢混交文」を読み続ける権利が有りました。しかしその権利は奪はれたのです。権利を奪った人らやそれを支持する勢力が、漢字はまだ韓国に残ってゐるとか、学問的な説得力・権威を振りかざしても、虚しく響きます。 呉さんが歴史についてどういふ考へをもっていようと、親族の葬儀に参加するのは彼女の権利でしかありません。それを誰かが邪魔しようとしたなんて私には信じられません。韓国は民主主義国家のはずです。そんなことは有り得ないはずです。
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.27 ) |
- 【日時】 2011/06/04 21:18
- 【名前】 千住観音3
- 漢字の羅列に過ぎないといふのは文化の断絶と余り変らない極端な発言です。ダーリンは外国人シリーズで英語のネイティヴスピーカーのトニーさんは「英語で病名を聞いても全く解らないが漢字の病名は聞いただけである程度想像できるしその想像はそんなに間違ってはゐない」といふ趣旨のことを言ってゐると思ひます。漢字にはそれこそ羅列しただけでも人類に取って有益な部分があると言へると思ひます。文化の断絶位の表現はそこまで目くじら立てる必要は無いんぢゃないでせうか。
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和製漢字 ( No.28 ) |
- 【日時】 2011/06/21 15:49
- 【名前】 koaki
- ちょっと話題からずれますが、韓国語訳された文を
우리말 배움터でチェックすると、熟語に関して,〇〇는 일본어에서 온 말로 〇〇나 '〇〇'으로 순화합니다. [행정분야 순화용어]とよく出てきます。
たとえば '축제'는 일본어에서 온 말로 '잔치'나 '축전'으로 순화합니다. '해외'는 섬나라인 일본에서 '외국'을 뜻하는 말로 씁니다. 우리나라에서는 '국외', '외국', '재외'로 써야 바릅니다
'매입/구입'은 일본어에서 온 한자말로 보입니다. 戸惑ってしまうのですが、 これらの和製?漢字も韓国のニュースや新聞でもよく使われていますし、韓国人に聞いても축제や해외の方をよく使うと言うのですが、こういうこともまた混乱の一因になっているのでしょうか。
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Re: 呉 善花 著 「漢字廃止」で韓国に何が起きたか 発刊! ( No.29 ) |
- 【日時】 2011/07/20 19:39
- 【名前】 千住観音
- いつもお世話になってをります。回想連体形についてお答へ下さり有難う存じます。「日本語で漢字を廃止して,全部かな書きにした場合の非効率性は考えただけでも恐ろしいですが,ハングルではそれが当てはまらず,とても効率的でよくできた文字だと思います」と仰るのは学問的な理由に基づくものではない様に愚考致します。呉善花先生同様にかじりたてうぇヴますたー様の主観といふことの様に理解してゐる次第ですが、この点いかがでせうか。
閉音節あるが故に日本語に比べた場合、書記言語としての韓国語・朝鮮語・高麗語に於ける漢字語の弁別性は高まる側面がある、といふのがよく謂はれることではある様に考へます。これは文字の仕組みの問題ではなく、開音節言語である日本語と閉音節言語である韓国語・朝鮮語・高麗語といふ言語の性質自体の違ひから来るものなのであって、世宗王とその部下の様に良い文字を作るのかどうかの問題ではない様に私は感じます。いかがお考へになりますでせうか。 国語純化運動と聞いて思ひつくのはトルコ語です。ですがトルコ語でも第二次大戦後それは実質下火になったといふ意見も聞きます。又、アラビア語、ペルシャ語の語彙は追放しようとしましたが、その一方英語の語彙を受け容れることは問題視されなかったといふ意見もある様です。 韓国や共和国では日本語からの借用語を排除しようと権力の側がしても、大衆はそれを全て受け容れてはゐない様に私は感じます。それは日本語からの借用語の中に大衆の感性にマッチしてゐるものが少なからず有るからではないでせうか。 混乱させようとしてゐるのは権力者の側なのであって、大衆は韓国語・朝鮮語・高麗語に相応しい言葉が何であるのかは自分達で判断してゐる様に私は感じます。この点皆様いかがお考へになりますでせうか。 漢字は書記日本語を表記する役に立ちますし、それが英語であれ、韓国語・朝鮮語・高麗語であれ、如何なる言語であれ、書記言語を表記する役に立つと私は主観的にですが愚考する次第です。皆様いかがでせうか。漢字が難しいとか解り難いとかいふのには学問的な根拠が無いと私めは愚考致します。
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